オンラインノヴェル渉猟

2005 | 07 | 08 | 09 |

2005-08-12

[]『オーダーメイド

作者:蓮海もぐら

URL:http://dolbacky.jp/cider/ordermate.html

ホームページhttp://dolbacky.jp/cider/hasulog/

また現在進行形の連載中の作品なのだが、ともあれ、この作品は今が旬だと思うので紹介する。いわゆるキモメンオタクの主人公が、イケメンの「親友」を脅して「可愛くて文系メガネ猫耳ニーソックス処女ツンデレでブリデレ」の女の子を要求し、その通りの格好の女の子が現れて⋯⋯というお話。お話はわりとありがちなのだがなんといっても主人公の独白がテンポがいいと言うよりほとんど異常なテンションあがりまくりで面白い。わかったようなわからないような言い方をすると不条理系エロマンガファウスト系のライトノヴェルの文体で書いた感じである。作者はライター職業にしているらしく、文章は非常に読みやすいのだが、たとえば途中で刑事がでてくるのだがその立ち居振る舞いにまったくリアリティーが欠けていたり小説としての幅は正直きわめて狭く、ちょっと苦しいなあと思うところもある。しかしたとえば、

婦女子等の集団が発する甲高い笑い声を間近で聞くと、どうしても自分と切り離して考える事ができなくなる。実際は「アタシさぁ、新カレできたんだけどぉ⋯⋯アイツ、ヤッてる時、般若心経を唱えるんだけどぉ、それってなんかヤバくねぇ?」とか、そういうくだらない話で盛り上がっているに違い無い⋯⋯とは思うんだけど、それでも気になってしまうのだからしょうがない。

などという文章には思わず噴き出してしまう(そんな女いねえ!)。

実際インターネットでは「モテる/モテない」とか「オタクであること」について過剰に意味づけして語る人間がわりと少なくない数で存在していて、おそらくこの作品はそういった存在の自己パロディ的なカリカチュアなのだろうと思うのだが、物語の展開はどうやら一種の「救済」に向かうようであり、その結末がどこまで笑えるものになるかは現在のところ(6話まで進行中)では微妙である。しかし小説としてはいまひとつ不備があるにしても主人公と語り手のあいだの距離感は一定に保たれていて、もたらされる「笑い」は立派な「芸」になっていると思う。ちなみに「ツンデレ」って何?という人は作品本文を参照のこと(私もこれを読んではじめて知った)。

ygwwifvbhuygwwifvbhu2014/05/06 04:15corcmpmo, <a href="http://www.mipmfmifaj.com/">yuimzzkcie</a> , [url=http://www.qlfjuofdyb.com/]bbouzbtnoy[/url], http://www.wwtgzvjhlx.com/ yuimzzkcie

2005-08-05

[]『テントロック——星部長と朝子とツキムシ』

作者:Sleepdog

URLhttp://www.geocities.jp/sleepdog550/novel/tento/tento-1.html

ホームページhttp://www.geocities.jp/sleepdog550/

今週は取り上げたいと思うような面白い小説に出会わなかった。また今日も私は用事があって外出しなければならないので、以前私のはてなダイアリーで紹介した作品を使い回すことにする。たぶんほとんどの人が読んでいないだろうし。

奇妙な味わいのサラリーマン小説。「星部長」という登場人物を、視点人物の「朝子」が、「ほしぶどう」との地口を面白がって「ファン」になることで、退屈な出勤(仕事)を何とか楽しいものに変換している、という状況から小説ははじまる。そのちょっとした「秘密上司の名前を地口にして愉快がっていること)」を抱えながらの「星部長」と「朝子」の会話は、当然二重化された意味を帯びることで滑稽なものとなり、ごく素直にこの小説コメディタッチにしているのだが、その地口から想像が発展して「星部長」の瞳が干しぶどうに見えてしまう、というイメージが具体的に記述されるあたりから、すでにその作品世界にはある種の「不穏さ」が漂っている。その「不穏さ」は、出勤ラッシュの駅のホームで「ツキムシ」なる怪物に「朝子」が遭遇するシーンから、インターネットで「ツキムシ」が「突き虫」であると判明する馬鹿馬鹿しいような地口によって、この作品のコメディタッチと融合した一種独特のカラー(個性といってもいいかもしれない)になるのだった。つまり地口的想像力とでもいうのか、言葉の表層の戯れが、この作品を統べる規則であって、だから「星部長」のフルネームが「星一得(=星行っとく?)」であると語られ、その隠れたロマンティックな性向が予想されるのだし、物語の後半で「ツキムシ」ならぬ「ヒキムシ」が登場したりするのだろう。まずそこらへんのトーンがとても面白かった。作者氏には是非百鬼園先生やレーモン・ルーセルを目指していただきたい。また、物語の展開としても、中盤の「星部長」を探る「朝子」の思考を辿り、きちんと伏線を張って「屋上」のシーンに繋ぐあたりのサスペンスに引き込まれるし、作品タイトルにもなっている「テントロック」の描写も、その後の「星部長」の奮闘ぶりもオフビートのおかしみがある。少し大袈裟な誉め方をするなら「ツキムシ」はオドラデクのようだし「テントロック」は流刑地の機械のようだ。しかもこの作品は希望に満ちた終わり方をするのだ(もちろんラストも規則は貫徹される)。物語のモチーフとしては「お気に入りの上司の意外な素顔」とでもいったサザエさん的なテーマのごくごく平凡なお話なのだが、地口的想像力という個性が発揮されたことによってとてもいい作品に仕上がっていると思う。前半のTVに関連した描写の中途半端マニアックさのセンスといい、Webでしか読めない種類の作品ということも含めてオススメの一作である。

2005-08-01

[]『ニート

作者:絲山秋子

URL: http://www.kinokuniya.co.jp/05f/d_01/short33/short01_33.html

ホームページhttp://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/9882/

このブログは毎週金曜日更新しようと考えていたのだが、先週は用事があって書く時間が取れなかった。やはりどうも不定期更新になってしまうようで、読んでくれている人には長い目で見て下さいと重ねてお願いします。

さて「はじめに」でも書いたが私は基本的に職業作家趣味作家とを分け隔てするつもりはないので、インターネット初出の小説で面白いと私が思った作品であればどんどん取り上げていく。というわけで今回は第96回文學界新人賞を作品『イッツ・オンリー・トーク』で受賞後、川端康成文学賞(『袋小路の男』)、芸術選奨文部科学大臣新人賞(『海の仙人』)と順調にキャリアを重ねている作家絲山秋子氏が、紀伊國屋書店のオンライン雑誌IfeelNo.332005summerに掲載した掌編を取り上げることにする。

私が絲山秋子氏を知ったのは氏がデビューする以前、ホームページを立ち上げて創作についていろいろ語っていた頃で、その天才宣言には、同じように世間的に認知されるあてもなくただ情熱だけで小説を書きつつある者として共感させられたりもしたものだった。

掌編小説ニート』は、絲山氏本人を想起させる「私」が、ひきこもりニートの「キミ」の生活が困窮しているのを知って、動揺し躊躇しながらも、関係が変容するのを覚悟して金銭的援助を申し出て、それを強引に受けさせる、というただそれだけの話である。それだけの話なのだが、作家という何の安定もない仕事を営む「私」が、世間的に現在は認知されてはいるのだが本質的に「生きにくい」存在であることをつねに意識せずにはいられない状況を生きつつあり、そして世間的には認知されにくい「ニート」という「生きにくさ」を生きている「キミ」と、金銭という非対称性を超えて連帯しようとする行為を、あやういが妙に絶望的な明るさをともなって描いていて、ここには「作品を書く」ことの一種の希望のようなものが描かれているように思えた。絲山氏の作品は「巧い」と評されることが多いし、実際非常に滑らかな語り口で非常に巧みなのだが、しかしその作品の基底には、つねにこのような「生きにくさ」を抱える者たちへの共感と連帯への意志が貫かれていて、それがどれだけ絶望的な断絶をはらんだ関係を扱っていてもそこに透明な明るさ、希望のようなものを感じさせる要因となっているのだと思う。